奥居合立業之部
不法に連行されるような場合、我を中心に左右に相手があり、共に前進歩行中、 相手の機先を制して、一歩やり過しながら右側の相手を抜打にたおし、 直ちに振り向かんとする左側の相手をも真向に斬りたおす業である。
「行連」と同様な場合、我は右斜前に一歩かわしたが、(相手をやり過ごすため) 左方の相手が事前にそれを悟って一歩遅れたので、その機先を制しこれを刺突してたおし、 更に右方の相手が振り向く所を斬撃してたおす業前である。
相手が正面より斬り込んでくるのを、我は刀を抜いて一歩退き、 相手の力を摺り落しつつ上段に振りかぶり、相手の退く所を 追撃してたおす業前である。
1.我は狭い板橋、又は堤などを行く場合、或いは階段などで追いおりる等、左右両側に かわせぬような場所を通行している時、前面より相手が仕掛けてくるのをその胸部に斬り付け、 一人宛たおしてゆく業である。【河野百錬先生、山本宅治先生】
2.右前方に多くの罪人を並べ置き、その背後より歩みゆきながら一人一人斬首してゆく業前である。 即ち据物斬りの形である。【森繁樹先生】
暗夜歩行中、前方に相手が来るのを認めたので、我は道路の左側に体を移して 相手の近寄るのを待ち受け、相手の真正面の地面に我が刀先をつけて音をさせ、 相手が音に注意して立ち止まる所を、機を失せず側面より斬撃してたおす業前である。
我れ歩行中二名の相手が前後して進んできたので、 我はその中間に進み、擦れ違いざまに機先を制して 前面の相手の顔面人中を柄当てし、後に振り向いて 背後の相手をたおし、更に前面の相手の方に向き直り 斬撃してたおす業である。
群衆の中に相手が居るのを見つけ、附近の群衆を押しわけて 真向より一刀両断に相手をたおす業前である。
我れ門内に入らんとした時、前後の相手より襲撃されたので、 門内に踏み込んだ所で前後の相手をたおす業前である。
我が左側に障壁があり、普通の方法では抜刀し難いような場合、 体の左上方に刀を抜きとり相手を斬撃する業前である。
相手が我が正面より斬り込んでくる故、我は体を右に開いて相手の刀を受け流し、 相手の肩首辺りに斬り下ろしてたおす業前である。
暇乞は上意打とも言われ、主命を帯びて使者に立ち、 相互に挨拶をする礼の体勢より抜き打ちにする業前である。 彼我の挨拶の際、相手に機先を制して行う刀法である。 三本がある。