十一、納刀

納刀には遅速同様の方技があるが、仕損じのないように 残心の気位い十分に、特に落ち着いてなすべきである。

1.
中腰(居合腰)にて血振るいしたところより、先ず、 右足を大きく後方(少し右後方)に退き、左手を鯉口に とって少し下腹を前に出し、刀先を大きく左上方に(左 上膊)円を描くようにして、刀の中程を鯉口に運ぴ当て るや、右拳をその高さのまま(帯の高さか少々高目に) 右斜前方ヘ素早く引き、(この時鞘手も十分後下方へ引 く、俗に鞘引きと言う)刀先十糎程を瞬時に納めながら、 静かに腰を落しつつ右膝が床につくと同時に納め終る。

2.
次に瞬時たおれた相手に納刀のまま残心の気位い十分 にして、そのままの体勢を保持しながら、右足を左足に 引きつけて徐ろに立ち上がり、相手の状況を十分に見届 けて目付を解くのである。

3.
次いで左足より一歩元の位置に退り、座して次の業に 移る。

4.
納刀は刀先部を先に(刀先を鋭く活かして)移行する ように動作し、また納刀の際は、いかなる場合にも相手 に対し、直ちに応じ得るような気位と体勢が大切である。