七、抜付について(正座の部「前」の抜付を引用する)

1.
先ず相手を見定め、左手を静かに膝より袴、帯を擦り 上げるような心持にて、鯉口の後方より鍔元を握り、直 ちに鯉口を切る。それと同時に(左手に合わすように) 右手を膝より静かに柄の前方より、(柄頭の方より)軽 く指先を触れ撫でるような心持で鍔近く(椽金をはずし て)にかける。その時両膝を軽く中央に合わせ(両膝を 前方に真直にする)ると共に、刀を抜きつつ膝を浮かし、 爪先を立て、刀先十糎程残るように抜いた時、腰を十分 に伸ばしきるや、丹田に力をこめて右足を一歩踏み出し、 その時左手鯉口を左後方に捻り引き、刀刃を前方に、右 拳を前に伏せるように抜きつつ柄を握り締め、横一文字 に(左方より右方に)相手の首に抜き付けるのである。 詳細については正座の部「前」の業で述べる。

2.

抜付は、居合道技法の真生命とも言うべき最も大切な 刀法であり、且つ最も難しいものである故十分に修練す ることが大切である。


3.
抜付は、居合道技法の真生命とも言うべき最も大切な 刀法であり、且つ最も難しいものである故十分に修練す ることが大切である。


4.
抜き付けた刀先の位置は、抜き付けた時の右拳から、 正面前方に引いた線上より少し内側(左方)にある程度 とする。


5.
抜き付けた刀の高さは、肩の高さより順次刀先に至る まで、やや下がり気味を良とする。即ち、水を注げば流 れる程度に刀先が下がるようになる。


6.
体は下腹及ぴ腰に十分気力をこめ、上体を真っ直ぐに し、踏み出した左膝足の内側角度は、直角よりやや広角 気味な程度を良とする。また、左膝頭より頭に至る上体 は成る可く真っ直ぐを可とし、左膝が後方に流れるのは 不可である。


7.
また、刀を右前に抜き付けると同時に右拳を十分に握 り締める。これを俗に刀が手の内に入ると言う。左手は 鯉口を握ったまま十分に左後方に引くか或いは、抜付と 同時に鞘手を離して軽く開き、栗形の上辺りを十分に押 えるかするのである。昔時土佐では、後者のように常 に粟形帯上に鞘手を軽く開いて押えたものである。これ は、昔時刀を持った手が、斬撃後(実践の後)柄より手 の離れ難かったこともある故、そのようなことの起らな いよう用心したものと聞いている。