十三、基本的参考事項

1.
服装並ぴに刀の点検は十分にして、演武に何の気がか りのないようにすることも大切である。衣服の皺、背筋 を正しく、衿元の揃い具合い、刀の目釘の点検、鞘の割 れ等、身の回り一切に十分留意して場所に臨むよう常に 留意すること。

2.

技法では、初心の間は十分に落ら着いて、ゆっくりと 基本通に、業を大きく正確に、然も技と技との間に区 切りをつけるようにして行い、また、いかに体を変化し ても、常に正しい姿勢が保てるよう心掛けて修練するこ とが大切である。高段位者の演技を真似て、一連に素早 く動作することは慎むべきである。


3.
業は総て一動作ごとに、たおさざればやまずの気迫十 分な修練が大切である。即ち、一動作ごとの終わりには、 グッと確かな気力の締りのあることが肝要であり、また、 更に次の動作に新たな気力をもって順次行うべきである。 但し、修練を重ね上達するに従い、業の間を理合に照ら して考慮し、速攻と間の配分を真実の仮想として修練す べきである。


4.
いかなる業に対しても、前足の踵並ぴに丹田には十分 力をこめ、また、手や腰の力を活用して気迫の充実を図 るべきである。


5.
総ての業において、その始めより終りまで、決して相 手を逃さないという気力と追撃が全身に満ち溢れるよう な気迫が大切である。


6.
刀を所持して座席にある時は、刀は必ず自己の右側に、 体に近く刃を内側にして正座すること。


7.
総ての業前に、頭や体の動揺をきたさないよう留意す ること。刀を頭上に振りがぶる場合、頭を前方に傾け、 また、斬り下ろす際上体を動揺する等種々癖が生ずるも のであるが、上体や腰はいかなる激動にも微動だもしな いよう工夫精進すべきである。体は技法の理合に則り、 左右前後・水平に動作し、上下の体動は慎むべきである。


8.
術理を十分に研究すること。
業前には、必ず動作に対する理合いがある。初心の時 は、なかなか術理の探究は困難であるが、修練につれて 研究納得し、自己の演武に自信を、そうして指導に万遺 憾なきよう心掛けるべきである。ただ、師や先輩よりこ のように教わったとして責任を逃れんとするようなこと もあるが、このようでは自ら満足も出来ず、また、指導 にもなんら自信をもてない故、疑問の点は十分に聞きた だし、出来得る限り自信をもつ事が大切である。